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■主張■

歯科流通業界を変えるかもしれないIT

九州歯科用品商協同組合
熊本県支部 粟津貴昭
 弊社の加盟している、歯科ディーラーの組合である「日本歯科用品商協同組合」が発行する会報(2001年新春号)に、私、粟津の投稿文が掲載されました。これは年末に「ITについて書くように」とのご指示があり、日頃考えていることをざっとまとめてみたものです。
 相変わらずの文章(笑)ではございますが、弊社がインターネット部門に力を入れ、かつ今後の歯科業界のさらなる発展を願う気持ちを感じていただければと思い、弊社サイトにも転載することといたしました。
 ユーザーの皆様にはもちろんですが、メーカーや卸、ディーラーの皆様にもぜひ楽しいディスカッションができれば、と思います。若輩者の身勝手な論理かもしれませんが、よろしくお付き合いお願い申し上げます。
2001年1月29日 粟津貴昭



 歯科流通業界の利益低下が叫ばれて久しい。日商連のレポートを読んでみると、その原因は概ね「大手ディーラーの安売り」「通販の台頭」「メーカーの直売」などということになっている。実際にそうなのかな、と考えてみることがよくある。
 流通業というものは、川上と川下の間にあるハードルを低くするために存在しているのだと思う。どの企業が真っ先にそのハードルを低くすることができるか、という競争を営んでいるのである。時間のハードル、距離のハードル、情報のハードル、言葉のハードル、慣習のハードル・・・。我々の諸先輩方はそれらに真剣に取り組み、かなりの部分でその解決に成功してきたのではないだろうか。
 すなわち、諸先輩方の努力のおかげで歯科業界における川上と川下のハードルは相当低くなってきたのである。ハードルが低ければ低いほど、それを超えたときの報酬が下がるのは必然であろう。私は現在の歯科流通業界の粗利減の原因をそう読んでいる。

 そのような現状の上に「IT」の登場である。ITすなわち情報技術、というとあまりに話が大きくなるので、ここでは単純に人と人あるいは企業間のコミュニケーション革命として捉えていきたいと思う。
 携帯電話を想起されたい。いったいそれがどれだけの男女間のコミュニケーションを促進したことか。毎日のようにクラブの女性からi-modeのメールが入ってくる経営者の方々は既にそれを実感されているはずである。また近頃、夜の街で迷子にならなくなった。待ち合わせに遅れても携帯があるから必ずつかまるのである。これなどは人と人とのコミュニケーションがこの2,3年で一気に促進されたよい例であろう。ITとはたぶんそういうものである。
 つまり、ITとは先ほどの言葉でいう「ハードルを下げる」という機能を持つものだ、ということである。それもかなり強烈な力を持っている。ということは必然的に我々の粗利はますます下がってしまう、とうことになる。実際私はそう思っている。下手すると、粗利はゼロになるのかもしれない。
 粗利がゼロになる、ということは、顧客にとっても、あるいはメーカー側にとっても我々流通業者の存在価値がゼロになる、ということを意味する。では我々はどうやって生き延びればよいのか。

 その答えはやはり「情報」にあるのではないか。モノを運ぶというハードルが低くなる一方で、情報の洪水の中をうまく泳いでいくための水先案内人の役割への期待が強くなってくるだろう。その結果、我々は今後エージェント(代理人)としての機能を要求されることになるような気がしている。
 すなわち、顧客からは雑多な商品情報、臨床における材料や機器の最適な組み合わせなどの情報を、つまり、メーカーの言いっぱなしの商品情報ではなく、プロにより検証された本当の意味で役に立つ情報を臨床家に代わって探してくる代理人であり、メーカー側からは顧客のさまざまな要求を探し出し、物流や金融、メンテナンスなどの細かいサービスを自社に代わってやってくれるアウトソーシング業、ということになる。ダン野村氏は野球界のエージェントだが、彼の商品である野茂がどれだけ勝とうが負けようが、直接彼の収入には関係が無い。ただ翌年からの彼への信頼度が変わるだけだ。そのようなスタイルが今後歯科業界でもでてくることもありうるのだろう。

 ここに至り、これまで我々が取り組んできた「モノをいかにして運ぶか、運び賃を幾ら貰うのか」という単純な図式がようやく崩れ去り、本来我々が社会的に望まれる機能に専念できるチャンスをもたらすのが、IT革命の本質なのかもしれない。
 IT革命は黙っていても進む。その時に我々が生き残るためには、既得権が消え去っても社会的に価値を認めてもらうだけの情報、知識、そして熱意を今から蓄えておくことではなかろうか。堺屋太一氏のいう「知価革命」が進行するのである。

 我々は、時代の流れが自社の利益を低減させることに怯えてはならない。
 むしろすっかり低くなってしまったハードルにしがみつくより、自らIT革命が持つその破壊的機能を利用して、本当に求められている、そして本当にやりたかった業務に立ち戻るチャンスとして取り組んでいきたい。諸先輩方が取り組んできた「ハードルを下げるという努力」がようやく実を結ぼうとしているのだから。
以上

  • 文責:粟津貴昭(有限会社 アワズデンタル)
  • 西暦2001年1月発行:日本歯科用品商協同組合連合会 会報No.105 P79より転載。
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