温故知新 2001.03.14

23.重度身障者の歯科医療

 寝たきりで、口を開くことがやっとという森永ヒ素ミルク中毒児童を持つ親から「ムシ歯の治療をどうしたらよいか」と尋ねられました。このように森永ヒ素ミルク中毒の重症者、ポリオなど、重度身体障害者の多数が、今なお、歯科医療が受けられないままに放置されているのです。
 「お気の毒ですが、開業医ではどうすることもできません・・・・・」と答えるより仕方がなく、重苦しい気持になりました。
 これらの人たちを治療するには、専門の技術や設備を必要とし、現状の開業医ではどうすることもできないのが実情です。こんな場合通例として、大学病院を紹介することにしていますが、地理的な条件、通院方法などに問題があり、結果的には放置されたままになっているようです。
 一日でも早く、重度身体障害者専用の施設を作るよう自治体に働きかけることは歯科医の社会的責任として当然ですが、一時的な思いつきや感傷で施設をつくることが問題を解決したことにはならず、それの活用には一層の努力が必要になります。
 それにしても、福祉の現状は、善意の奉仕≠ノよりかかるものが多く、心細いかぎりです。



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